ざっくりわかる!不動産の鑑定評価に関する法律

はじめに
国家資格にはその資格に対応する法律があることが多く、不動産鑑定士にも「不動産鑑定評価に関する法律」というものがあります。
あまり有名な法律ではありませんが、今回はこの法律について概要をご紹介します。
(当コラムは正確性よりもわかりやすさを重視していますので、正確な内容・表現につきましては条文をご覧ください)
- 法律名:不動産の鑑定評価に関する法律
- 略称:不動産鑑定法、不動産鑑定評価法
- 公布日:昭和38年7月16日
- 改正法令公布日:令和2年6月10日
- 条数:全61条
(令和3年10月1日時点)
第一章 総則

- 目的 (第1条)
この法律は、鑑定評価に関する必要な事項を定めて、土地等の適正な価格の形成に役立つことを目的としています
- 定義 (第2条)
「鑑定評価」「不動産鑑定業」「不動産鑑定業者」の定義を定めています。
第二章 不動産鑑定士

第一節 総則
- 不動産鑑定士の業務 (第3条)
不動産鑑定士の業務として1項業務(鑑定評価業務)と2項業務(周辺業務)があります。
- 不動産鑑定士となる資格 (第4条)
試験に合格して、実務修習を修了した後に国土交通大臣の登録を受けた者が不動産鑑定士となる資格があります。
- 不動産鑑定士の責務 (第5条)
不動産鑑定士は良心に従い、誠実に不動産鑑定評価を行い、信用を傷つけるような行為をしてはいけません。
- 守秘義務 (第6条)
鑑定評価業務関して知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。
- 知識及び技能の向上 (第7条)
不動産鑑定士は、知識と技能の維持向上に努めなければいけません。
第二節 不動産鑑定士試験
- 試験の目的・方法 (第8条)
学識と応用能力を有するかを判定することが目的であり、短答式と論文式による筆記で行われます。
- 試験科目 (第9条)
短答式は、行政法規と鑑定理論
論文式は、鑑定理論、民法、経済学、会計学
- 試験の免除 (第10条)
短答式:合格した者はその後2年を経過する日まで免除
民法:教授、准教授、博士、司法試験・公認会計士試験の民法の合格者
経済学:教授、准教授、博士 、公認会計士試験の経済学合格者
会計学:教授、准教授、博士、 公認会計士試験の会計学合格者
- 受験手数料 (第11条)
政令で定める額とされています。
(令和3年度は電子申請の場合12,800円、書面申請の場合は13,000円)
- 試験の施行 (第12条)
毎年1回以上、土地鑑定委員会が行います。
- 合格の取消し (第13条)
不正行為等した者に対して合格を取消し、または試験を受けることを禁止できます。
第三節 実務修習
- 実務修習の概要 (第14条)
不動産鑑定士試験に合格した者に対して、高度な専門的応用能力を修得させるため、国土交通大臣の登録を受けた者(実務修習機関)が行います。
- 実務修習機関の登録 (第14条)
実務修習に関する業務を行おうとする者は申請をしなくてはいけません。
- 欠格条項 (第14条)
一定の要件を満たさなくては登録を受けることはできません。
- 登録の更新・義務・届出・業務規程・休廃止 (第14条)
実務修習機関は登録を更新しなくてはいけません。また様々なルールがあります。
- 事業報告書等の提出 (第14条)
実務修習機関は毎事業年度経過後3ヶ月以内に国土交通省に報告しなければいけません。
- 実務修習の状況の報告・終了の確認 (第14条)
実務修習の全ての過程が終わったときは、書面で国土交通省に報告しなくてはいけません。
第四節 登録
- 登録 (第15条)
不動産鑑定士になるためには、国土交通省の定める名簿に登録をしなくてはなりません。
- 欠格事項 (第16条)
未成年者、破産者で復権を得ない者、禁固以上の刑に処せられた者で3年を経過しない者・・等は登録を受けることができません。
- 登録の手続き・変更の手続き・死亡等の届出 (第17条~第19条)
不動産鑑定士の登録を受けようとする者は一定の手続きを踏み、変更があった場合には変更の登録をしなくてはいけません。
- 登録の消除 (第20条)
国土交通省は次の場合には不動産鑑定士の登録を消除しなくてはいけません。
・本人から消除の申請があった場合
・死亡したとき等
・不正の手段により登録を受けたことが判明したとき
・不動産鑑定士試験の合格を取り消されたとき
第三章 不動産鑑定業

第一節 登録
- 不動産鑑定業者の登録 (第22条)
2以上の都道府県に事務所を設ける場合には国土交通省、その他は都道府県に備える登録簿に登録を受けなくてはいけません。
業者のの登録有効期間は5年です。
- 登録の申請 (第23条)
登録の申請には一定の事項を記載した登録申請書を提出しなくてはいけません。
- 登録の拒否 (第25条)
国土交通省は一定の場合には登録を拒否しなくてはいけません。
- 変更の登録 (第27条)
登録事項に変更があった場合には変更の登録をしなくてはなりません。
- 書類の提出義務 (第28条)
不動産鑑定業者は毎年1回一定の時期に次の書類を提出しなくてはいけません。
・過去1年間における事業実績の概要書面
・事務所ごとの不動産鑑定士の変動を記載した書面
- 登録の消除 (第30条)
登録権者は次の場合には不動産鑑定業者の登録を消除しなくてはいけません。
・廃業、死亡、破産等があった場合
・更新の登録申請がなかったとき。
・不正の手段により不動産業者登録を受けたことが判明したとき
第二節 業務
- 不動産鑑定士の設置 (第35条)
不動産鑑定業者には事務所ごとに不動産鑑定士を1名以上置かなくてはいけません。
不動産鑑定士が辞めてしまった場合には2週間以内に適合するように措置をとらなくてはいけません。
- 不動産鑑定士以外の鑑定評価の禁止 (第36条)
不動産鑑定士以外の者が不動産鑑定を行えません。
- 守秘義務 (第38条)
不動産鑑定業者は正当な理由がなく取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはいけません。
- 鑑定評価書等 (第39条)
鑑定業者は依頼者に国土交通省令で定める事項を記載した鑑定評価書を交付しなくてはいけません。
第四章 監督

- 不当鑑定の懲戒 (第40条)
不当な鑑定評価が行われたときは国土交通大臣は不動産鑑定士に対して懲戒処分をすることができます。
- 鑑定業者に対する監督処分 (第41条)
一定の場合、登録権者は不動産鑑定業者に対して監督処分をすることができます。
- 不当鑑定に対する措置の要求 (第42条)
不当な鑑定と疑われる事実があるときは、誰でも国土交通大臣または都道府県知事に対して適当な措置をとるべきことを求めることができます。
第五章 雑則

- 試験委員 (第47条)
不動産鑑定士試験の問題作成及び採点を行うため、土地鑑定委員会に試験委員を置きます。
- 不動産鑑定士等の団体 (第48条)
不動産の鑑定評価の進歩改善を図ること等を目的とする社団または財団で国土交通省で定めるものは届出が必要です。
- 名称の使用禁止 (第51条)
不動産鑑定士でないものが不動産鑑定士の名称を用いてはいけません。
第六章 罰則

- 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 (第56条)
・不正の手段により不動産鑑定業者の登録を受けた者
・無登録業者が不動産鑑定業を営んだ者
・業務停止命令に違反して業務を営んだ者
- 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 (第57条)
・秘密を洩らした者
・不動産鑑定士試験に関し、試験問題を漏らし、または、不正な採点をした者
・実務修習業務の停止命令に違反した者
・不正の手段により不動産鑑定士の登録を受けた者
・不動産鑑定士でない者が不動産鑑定評価を行った場合
・不動産鑑定士でない者に不動産鑑定評価を行わせた者
- 30万円以下の罰金 (第58条)
・不動産鑑定士でない者が不動産鑑定士の名称を用いた場合
・第28条の書類の提出を怠り、または虚偽の記載をして書類を提出した者
不動産鑑定士

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