「取引事例の価格を知る方法」と「履歴管理票」

取引事例と不動産鑑定

取引事例は実際の市場で成立した価格で実証性の高い資料です。

取引事例比較法では、この取引事例を豊富に収集して対象不動産の価格にアプローチします。

このように不動産鑑定では「取引事例」は非常に重要な資料の一つとなりますが、この「取引事例」を入手するのは実は簡単ではありません。

取引事例価格を知る方法

取引事例価格を調べる方法はいくつかありますが、一般の方にもできる方法業者のみできる方法があります。

ここではその方法をご紹介します。

土地総合情報システム(一般の方も可能)

国土交通省が公開している不動産取引価格を調べるサービスで、地価相場を調べるためには非常に有意義です。
ただ、個人情報保護との兼ね合いから、所在・形状・取引価格・取引時期・道路幅員等がぼかされてしまっているため不動産鑑定でこの情報をそのまま使うわけにはいきません。

方法
1

REINS Market Information (一般の方も可能)

不動産業者だけが使える「REINS(レインズ)」の一般消費者向けバージョンです。
こちらも方法1と同じで、地価相場を調べるためには有意義なものですが、情報がぼかされてしまっているので鑑定では使えません。

方法
2

REINS(レインズ)(宅建業者のみ)

不動産流通機構会員である不動産会社のみが使える有名なサービスです。
情報はぼかされておらず、成約事例も見ることができますので、調査を加えれば鑑定評価においても十分に使え得るものになります。
※ただし、取引に特別の事情がある場合に、その内容まではわかりませんのでその点に注意が必要です。

方法
3

REA-NET(不動産鑑定協会員のみ)

連合会及び士協会に加入している不動産鑑定業者のみが使えるサービスです。
不動産鑑定士がコツコツと蓄積してきた取引事例データで最も不動産鑑定に適しています。
そしてこの取引事例データを正当に取得したことを証明するのが「履歴管理票」です。

方法
4

REA-NETについて

このように一番信頼性が高いといえるREA-NETですが、このサービスを使うためには厳格な要件と規定が定められています。

閲覧要件

REA-NETを使うためには下記全ての要件を満たさなくてはいけません。

  • 不動産鑑定士等であること
  • 不動産鑑定業者に所属していること
  • 連合会の会員であること
  • 士協会の会員であること
  • 講習の修了者であること
  • 閲覧停止されていない者であること

ルール

閲覧以外の規定には次のようなものがあります。

  • 目的外利用の禁止 (鑑定評価業務等以外に使えません)
  • 案件ごとに取得 (案件ごとに取得しなくてはいけません)
  • 事例の譲渡・交換の禁止
  • 履歴管理票の添付 (鑑定評価書に添付しなければいけません)
  • 安全管理措置の徹底


REA-NETは、精度の高い取引事例を入手することができますが、上記のような厳しい要件とルールをクリアしなくてはいけません。

履歴管理票とは

履歴管理票とは、REA-NETにより取引事例を正当に入手したことを表すもので、不動産鑑定評価書に添付する文書です。

実際の履歴管理票をご紹介します。

履歴管理表


発行番号・利用目的・管理番号が記載されており、トレーサビリティ制度(追跡可能)により不正利用者の追跡調査が可能となっています。

まとめ

不動産取引価格がオープンになれば良いのですが、現状では個人情報の観点から進んでいないそうです。

このような状況で取引事例を収集するにはREA-NETが一番優れているため、通常の不動産鑑定業者であれば、ほぼ必ずREA-NETを使っています。

もし不動産鑑定を依頼することがありましたら、履歴管理票がついているかチェックしてみてください。

その業者が信頼できるか否か判断する一つの目安になります。

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