専門性研修プログラムについて

日本不動産鑑定士協会連合会(以下、連合会)では、平成31年度から不動産鑑定士向けの「専門性研修プログラム」を実施しています。
今回はこの「専門性研修プログラム」(以下、プログラム)についてご紹介します。
令和4年7月1日時点の情報をもとにご紹介しています。
プログラムの目的
不動産鑑定と一言で言っても、その業務は多岐にわたります。
たとえば、相続・証券化・賃料・企業会計・裁判等で鑑定評価が必要な場合にはそれぞれの分野に応じた専門性が必要になってきます。
そこでこのプログラムにより、不動産鑑定士の得意分野・専門分野に関する有用な情報を依頼者様に提供することを目的としています。
(専門知識の見える化+品質の確保)
具体的には、連合会が不動産鑑定に関わる分野ごとに体系化したプログラムを実施し、修了者には修了証を発行するとともに氏名等が公表されることにより見える化が図られています。
提供プログラム
令和4年度においては次の3つの分野に関するプログラムが用意されています。
証券化専門性
研修プログラム
相続専門性
研修プログラム
賃料専門性
研修プログラム
プログラムの内容
いずれのコースもプログラムは「知識・理論コース」と「演習コース」の2段階の課程で構成されています。
「知識・理論コース」を受講し、修了した者だけが「演習コース」を申し込むことができます。
- 知識・理論コース
- 日本不動産鑑定士協会連合会の提供する指定研修をeラーニングで終了する必要があります。

- 演習コース
- 演習コースは「評価実務演習」と「小論文」の2つの課程からなります。
「評価実務演習」では不動産鑑定評価報告書を提出し、審査がなされます。
「小論文」は「評価実務演習」合格者に対して課されます。

- プログラム修了
- 小論文を合格すると修了者として認定されます。
修了証が発行されるとともに、希望者に対しては連合会のHPに氏名等が公表されます。

各プログラムの詳細
証券化専門性プログラムの詳細

「知識・理論コース」
次の研修の受講と確認テストの合格が必要です。
講座名 | 料金(※) |
---|---|
不動産証券化の理論と実務 | 4,000円 |
証券化対象不動産の鑑定評価(基礎編) | 3,000円 |
投資用不動産の鑑定評価(平成27年版) | 3,000円 |
エンジニアリング・レポートの基礎知識(平成27年版) | 4,500円 |
オフィス・住宅の評価実務に関する研修 | 3,000円 |
商業施設・物流施設の評価実務に関する研修 | 3,000円 |
「ホテルの不動産鑑定評価(改訂版)」に関する研修 | 3,000円 |
高齢者住宅・施設・病院の不動産鑑定評価に係る研修 | 3,000円 |
令和3年度倫理研修 | 無料 |
合計 | 26,500円 |
「演習コース」
①評価実務演習
・鑑定評価報告書の提出(2件)
・想定案件可能
・物件規模、アセットタイプの要件あり
②小論文
・テーマが公表され、1,600字以上2,000字以内の小論文を提出
・公表から提出まで約2か月間の期間あり
相続専門性プログラムの詳細

「知識・理論コース」
次の研修の受講と確認テストの合格が必要です。
講座名 | 料金(※) |
---|---|
財産評価の算定と税務の要点 | 3,000円 |
資産税と鑑定評価が利用できる場面 | 3,000円 |
相続に関する法的基礎知識 | 3,000円 |
相続に関する税務総論 | 4,000円 |
不動産オーナーの相続・事業承継対策 | 2,000円 |
民事信託と相続対策 | 2,000円 |
遺産整理の実務と課題 | 3,000円 |
非上場株式の算定方法 | 2,000円 |
合計 | 22,000円 |
「演習コース」
①評価実務演習
・鑑定評価報告書の提出(2件)
・想定案件可能
②小論文
・テーマが公表され、1,600字以上2,000字以内の小論文を提出
・公表から提出まで約2か月間の期間あり
家賃専門性プログラムの詳細

「知識・理論コース」
次の研修の受講と確認テストの合格が必要です。
講座名 | 料金(※) |
---|---|
改正民法(債権法)講義 | 2,500円 |
賃貸借契約に係る法制度の変遷と継続賃料に関する判例解説 | 2,500円 |
都市における土地利用の経済理論-地代の決定と土地消費- | 3,500円 |
賃料評価の変遷と新規賃料の評価手法 | 3,500円 |
継続賃料の鑑定評価 | 6,500円 |
事業用不動産(オペレーショナルアセット)の賃料評価 | 4,500円 |
農地の賃料評価と賃借料 | 2,500円 |
税務上の相当の地代と公有財産の貸付基準 | 2,500円 |
合計 | 28,000円 |
「演習コース」
①評価実務演習
・鑑定評価報告書の提出(1件)
・想定案件可能
②小論文
・テーマが公表され、1,600字以上2,000字以内の小論文を提出
・公表から提出まで約2か月間の期間あり
まとめ
専門家と呼ばれる士業の中でもさらにその専門分野は多岐にわたっています。
例えば、離婚問題に強い弁護士もいれば労働問題に強い弁護士がいるように、相続に強い不動産鑑定士がいれば、賃料に強い不動産鑑定士もいます。
特定の専門分野の不動産鑑定士にその業務を委託することは依頼者様と不動産鑑定士の相互にメリットがあります。
その専門性を「見える化」するためのプログラムですが、いかんせん種類がまだ少ないのが欠点です。
令和4年6月時点で相続・証券化・賃料のみですので、多くの分野をカバーできていません。
もしも、相続・証券化・賃料評価でお悩みの際は、このプログラムの修了不動産鑑定士に相談してみるのもいいかもしれません。
不動産鑑定士

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