建物評価方法 ~固定資産税評価額VS鑑定評価額~

~はじめに~
当コラムは、「不動産鑑定をもっと身近に」感じて頂くことを目的としています。
そのため、正確性よりもわかりやすさを重視しておりますことをご承知おきください。
固定資産税評価と不動産鑑定評価
不動産の評価方法には様々なものがありますが、今回は建物評価で「固定資産評価」と「鑑定評価」が争われた事例を紹介します。
まずは、固定資産評価と不動産鑑定評価について簡単にご説明します。
固定資産評価
総務省が定める「固定資産評価基準」に則って固定資産評価員が評価します。
鑑定評価
国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に則って不動産鑑定士が評価します。
いずれも基準に則って建物評価が行われるものですが、次の点で大きく異なります。
画一評価か個別評価か
固定資産評価基準は一部地域性も考慮されていますが、基本的には画一的な評価方法であるのに対して、不動産鑑定は個別的な評価方法でありますので、より実態を評価に反映することが可能です。
建物残存価格について
不動産鑑定では、老朽化して使い物にならなければ当然ゼロ評価もあり得ますが、固定資産評価基準ではどんなに老朽化していようと20%の残存価値が認めらています。
事件の概要【最高裁 平成15年7月18日判決】
納税者が建物価格を不服として審査の申出
納税者は伊達市長によって登録された建物の固定資産評価額3,008万円を不服として固定資産評価委員会に審査の申出
固定資産評価審査委員会が棄却
固定資産評価審査委員会は誤りはないとして棄却
納税者が取消の訴えを提起
納税者は不動産鑑定評価により建物価格1895万円として鑑定評価書を提出
高裁→納税者の主張が認められる
高裁は鑑定評価書には問題がなく、建物の固定資産評価額は時価を超えており違法と判断
最高裁→原審の判決は破棄→差戻し
最高裁では原審を破棄して差戻し
判断の概要
高裁の判断
当該鑑定評価書は、その評価の前提となる事実の確定、計算過程に問題があると認められないから、当該鑑定評価書に基づいて本件建物の適正な時価を認定するのが相当である。
したがって、伊達市長の決定した価格である3008万円は適正な時価を超えるから違法である。
最高裁の判断
「固定資産評価基準に定める方法によっては再建築費を適切に算定することができない特別の事情」または「評価基準が定める減点補正を超える減価を要する特別の事情」が存しない限り、その適正な時価であると推認するのが相当である。
納税者の鑑定評価書は、再調達原価と残価率の根拠を明らかにしていないため、特別の事情があるということはできない。
固定資産評価の問題点
裁判の結果については鑑定評価書を見ていないので何とも言えません。
しかし固定資産評価基準の経年減点補正率は問題であると感じます。
先にも述べましたが、どんなに老朽化していようと20%の価値があるというのは理屈に合いません。
老朽化していて使えない建物は取壊し費用が掛かるため、経済的価値はマイナスですらあります。
所感
固定資産税が高いと悩んでいらっしゃる方は多いかと思います。
例えばそれが、「課税標準の特例を適用していない」などの理由であれば、審査の申出をすれば解決する可能性が高いです。
しかし今回の事件のように適正な時価を争う場合には多額の費用と時間をかけて戦うことになります。
最高裁の判断を見ると公共団体と争うことの難しさをひしひしと感じます。
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