鑑定評価書?調査報告書?~成果報告書のタイトルの違い~

はじめに

不動産の価格や賃料の適正な経済価値を証明したい場合のために不動産鑑定業者が存在します。

不動産鑑定業者は、依頼に応じて不動産の価格や賃料に関する「成果報告書」を作成しますが、各業者のホームページをみると様々なタイトルがつけられています。

「不動産鑑定評価書」「不動産調査報告書」「不動産価格意見書」「不動産価格報告書」等々

今回はこの「成果報告書」のタイトルについて意味や違いをご紹介します。

成果報告書のタイトルの意味

成果報告書のタイトルは不動産鑑定業者が自由につけていいわけではなく、一定のルールがあります。

不動産鑑定業者が遵守すべき「価格等調査ガイドライン」によって、次のようなルールが定められています。

不動産鑑定評価基準に全部則っている場合

「不動産鑑定評価書」というタイトルをつけることができます。

不動産鑑定評価基準に一部でも則っていない場合

「鑑定」や「評価」という用語を用いてはならないというルールがあります。
実務上は、「不動産調査報告書」「不動産価格意見書」「不動産価格調査書」等の名称が使われています。

基準に則るとは?

不動産鑑定業者に所属する不動産鑑定士が価格等を評価する場合、原則として国土交通省が定める「不動産鑑定評価基準」に則った「不動産鑑定評価書」を発行するものとされています。

この「不動産鑑定評価基準」には利用者保護のため細かいルールがたくさんあります。

このルールを全て満たす場合に基準に則った鑑定評価書が発行できることになります。

基準に則らないとは?

「不動産鑑定評価基準」は様々なルールがあるため、「不動産鑑定評価基準に則った評価」しかできないとすると、鑑定評価書を発行できる場面は限られてしまいます。


それでは、依頼者からのニーズに答えることができなくなってしまい、鑑定業者があまり役に立たないものになってしまいます。

そこで、依頼者からのニーズに答えることができるように一定の条件を満たす場合には「不動産鑑定評価基準に則らない」ことができるようになっています。

一定の条件の詳細は割愛しますが、利用者が不測の損害を被ることがないように配慮されています。

基準に則らない評価は精度が低い?

基準に則らないからと言って精度が低いとは言えません。(机上査定等を除きます)

基準に則らない場合は、依頼目的に対応するためのケースが多く、鑑定評価基準に則ることができない事情があるというだけで、則ることができる部分は全て則らなければいけないため手間が大幅に省けるといったこともありません。

具体的な成果報告書の違い

理屈だけではわかりにくいですので当社の成果報告書の違いでご説明します。

不動産鑑定評価書

不動産鑑定評価基準に則ることができると判断される場合に、こちらの成果報告書をご案内します。

調査報告書

不動産調査報告書

ご依頼の内容や利用目的によって不動産鑑定評価基準に則ることができないと判断される場合に、こちらの成果報告書をご案内します。

一部則ることができないとはいえ、則ることができる部分は則りますので、精度が劣るということはありません。

不動産価格意見書

ご依頼目的により、安価に大まかな価格を知りたい場合にこちらの成果報告書をご案内します。

いわゆる机上査定なので、精度は上記の成果報告書に比べると劣りますが、不動産業者の無料査定よりは信頼性は優ります。

こちらの成果報告書は利用者保護の観点から内部利用の場合のみ作成を承っています。

もうなくなった?簡易鑑定

以前は、「簡易鑑定」という成果報告書が闊歩した時代もありましたが、「価格等調査ガイドライン」が平成22年に登場してからはなくなりました。
(・・なくなったはずです)

なぜなら、簡易ということは不動産鑑定評価基準を満たしていないと考えられ、不動産鑑定評価基準を満たしていなければ「鑑定」という文言を使用してはならないからです。

もしも、、、もしも成果物報告書に「簡易鑑定書」などとついているものに出会ったら要注意です。

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