税法「時価」のあれこれ

「時価」とは?
不動産の時価は、税務上たびたび問題となりますがこの「時価」とは一体どういうものなのでしょうか。
実は税法によって様々な定義や解釈がなされています。
今回は様々な「時価」についてご紹介します。
所得税・法人税法の時価
所得税法・法人税法では「時価」の定義が規定されていません。
そのため、しばしば争いとなっていますが、裁決・判例等では概ね次のように解釈されています。
公示価格は実際にも時価に近いものであるが、通常は時価を或る程度下回るもの。
最高裁H4.11.16(所得税)・京都地裁H3.12.25(法人税)
ポイントは所得税法・法人税法上の時価は財産評価基本通達による価格ではないということです。
なぜなら財産評価基本通達は、相続税・贈与税申告の際に納税者の便宜を図って簡易的に評価するものであり、一定の緩和がとられているからです。
したがって、所得税法・法人税法で時価が問題となったときは、不動産鑑定評価が最も合理的な評価となります。

相続税法の時価
相続税法では時価の定義がおかれていませんが、財産評価基本通達に時価の定義がおかれています。
「時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額」
財産評価基本通達

固定資産税における時価
固定資産税について定められている地方税法341条第5号には「適正な時価」とだけ定められており、やはり定義がおかれていません。
しかし「時価」の意義について最高裁の判断に次のものがありますのでご紹介します。
「『時価』なる概念は,通常,正常な取引条件の下に実現される所定の時点における取引価格を意味すること,投機目的又は将来の期待による価格形成要因が不正常な条件として排除される場合の価格は当該土地の利用利益に近接すること,評価基準によれば標準宅地は正常売買価格に基づいて決定するものとされていることに照らせば,『時価』なる概念について,通常と異なる意義が与えられていると解する根拠はない。……法は,課税標準又はその算定基礎となるべき価格を正常取引価格とした上,税率の決定又は課税標準若しくは税額の調整によって,固定資産税の性格に応じた適正な課税を実現しようとしているものと解すべき」
最高裁H15.06.26(固定資産税)
この判決は固定資産税では重要な1つです。
最高裁では、土地の収益性ではなく、土地の資産価値に着目してその所有という事実に担税力を認めて課する財産税と解釈しています。

まとめ
今回は税法をご紹介しましたが、不動産鑑定と税法は非常に密接に関係しています。
不動産は1物4価と呼ばれる上に、「時価」の意義についても税法によって解釈が変わってきます。
このような状況ですので、不動産の適正な時価については簡単に考えずに、不動産鑑定士にお気軽にご相談ください。
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