路線価と取引価格の関係(都心オフィス編)

土地の適正価格というのは非常にわかりにくいため、公的価格を目安にして取引されることも多いかと思います。

たとえば、相続税路線価は公示価格の80%を目安に付されていることから「相続税路線価の1.25倍が大体の土地価格だ」と考えることもあるのではないでしょうか。

では実際にそうなのでしょうか?

今回はこの「相続税路線価」と「実際の取引価格」の関係を見ていきたいと思います。

(※今回は「都心のオフィス用地」について検討します)

本コラムの内容は不動産鑑定のことを広く知って頂くことを目的としています。
個別の土地価格は様々な価格形成要因によって異なりますので、実際案件でお困りの際は不動産鑑定士にご相談ください。

路線価とは?

路線価とは、道路に付された土地価格のことで、接道する土地価格の評価に用いられます。

路線価には相続税路線価と固定資産税路線価の2種類がありますが、一般的なのは相続税路線価です。

(以後、相続税路線価を路線価と呼びます)

路線価は国税庁が相続税・贈与税を課税するため、課税財産である土地を簡易に評価できるようにするために付設されています。

また、納税者が不利にならないように公示価格の80%を目安に付されています。

路線価と取引価格

現実の取引価格と路線価はどれくらい乖離しているのでしょうか。

乖離率を比較しやすくするために「路線価倍率(取引価格÷路線価)」という指標を用います。

「路線価倍率」は路線価の何倍で取引されているかを表しています。

仮に【路線価が80の土地が100で取引された】のであれば、路線価倍率は1.25倍となりますので、この1.25倍をベンチマークとお考え下さい。

路線価倍率

では、「都心・オフィス用地」の路線価倍率を下記の2つの方法で検討してみます。

①鑑定評価で使う取引事例をもとに路線価倍率を計算

②J-REIT等の公開情報をもとに路線価倍率を計算

①鑑定評価で使う取引事例をもとに路線価倍率を計算

最近の実際案件で使った都心の取引事例(商業地・オフィス)の路線価倍率を計算したところ、次のような結果になりました。

取引事例路線価倍率
取引事例A2.58倍
取引事例B2.55倍
取引事例C2.56倍
取引事例D2.09倍
取引事例E2.34倍
取引事例F1.61倍
取引事例G2.06倍
平均(7件)2.26倍

わずか7件の事例ですが、平均は2.26倍となり一般的に言われている1.25倍よりもかなり高い数値となっています。

(≒取引価格の44%水準)

②J-REIT等の公開情報をもとに路線価倍率を計算

【野村不動産ソリューションズ様の調査結果(https://www.nomu.com/cre-navi/market/20220118.html)】を引用させて頂きます。

J-REITの公開情報をもとに詳細な検討がされていますが、結論だけ引用させて頂くと、2021年東京の路線価倍率の平均は【3.20倍】とのことです。

J-REIT事例路線価倍率
平均(34件)3.20倍

こちらは34件の事例をもとに平均値が計算されていますが、やはり1.25倍とは大きな乖離があります。

(≒取引価格の31%水準)

結論

非常に限られたデータですが、都心オフィスの路線価倍率は【2.26倍~3.20倍】(取引価格の31%~44%)という結果になりました。

一般的に言われている【1.25倍】(公示価格の80%)とは大きく乖離していることが見て取れます。

まとめ

路線価の目的は課税財産(土地)を簡易かつ平等に評価することであり、土地の適正な時価を求めることではありません。

路線価を参考にする場合には、路線価だけではなく地域の「路線価倍率」も調べてみることをおすすめします。

(不動産の取引価格は一般的には手に入れにくいものですので、不動産鑑定士に相談してみるのも良いかと思います)

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