鑑定業者への不適切な働きかけにより行政処分勧告

2022年6月17日、証券取引等監視委員会が、株式会社エスコンアセットマネジメントを検査した結果、不動産鑑定業者への不適切な働きかけ不適切な不動産鑑定業者選定プロセスが認められたため、内閣総理大臣及び金融庁長官に対して行政処分を行うように勧告したというニュースが流れました。

このコラムは鑑定評価のことをより多くの方に知って頂くことを目的としています。
正確性よりもわかりやすさを第一としておりますので詳しく知りたい方は証券取引等監視委員会のぺージでご確認ください。

今回はこのニュースをわかりやすくご紹介します。

概要

本コラムでの呼び方
株式会社日本エスコン→「親会社」
エスコンジャパンリート投資法人→「投資法人」
株式会社エスコンアセットマネジメント→「AM会社」

投資法人が親会社から不動産を取得するにあたって鑑定評価が必要だったため、AM会社が外部の鑑定業者に鑑定評価を依頼したわけですが、

このAM会社から鑑定業者の依頼に関して①不適切な不動産鑑定業者選定プロセス②不動産鑑定業者への不適切な働きかけがあったことから行政処分勧告がなされました。
(赤矢印の部分)

※行政処分勧告は金融庁設置法第20条に定められています。

第二十条 委員会は、金融商品取引法、投資信託及び投資法人に関する法律、預金保険法、資産の流動化に関する法律、金融サービスの提供に関する法律、社債、株式等の振替に関する法律又は犯罪による収益の移転防止に関する法律(これらの法律に基づく命令を含む。)の規定に基づき、検査、報告若しくは資料の提出の命令、質問若しくは意見の徴取又は犯則事件の調査(次条において「証券取引検査等」という。)を行った場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、金融商品取引の公正を確保するため、又は投資者の保護その他の公益を確保するため行うべき行政処分その他の措置について内閣総理大臣及び長官に勧告することができる。

金融庁設置法

①不適切な不動産鑑定業者選定プロセス

次の事実により不動産鑑定業者の選び方が不適切と判定されています。

AM会社は複数の鑑定業者から「概算評価額」と「鑑定報酬」を聴取し、そのうち最も高い「概算評価額」を提示した鑑定業者に対して「鑑定報酬額」が最も安くなるように交渉をした。

どこが問題だったのか、今回のケースと似たような状況を想定してみます。
(イメージです)

依頼者

(なるべく高い評価額を出してほしいな)

依頼者

概算評価額と鑑定報酬のお見積りを下さい。

鑑定業者A

概算評価額は1000

報酬は10です。

鑑定業者B

概算評価額は1100

報酬は20です。

鑑定業者C

概算評価額は1200

報酬は30です。

依頼者

(鑑定業者Cが一番概算評価額が高い!でも鑑定報酬も高いな。)

依頼者

(概算評価額のことは伏せて)鑑定業者Cさん、他社はもう少し鑑定報酬が安いですよ。もっと安くしてくれませんか?

鑑定業者C

・・・

このやりとり、どのように感じられましたか?

私個人的には複数の鑑定業者に概算評価額を聴取したところまでは必ずしも悪いとは思いません。

(裁判で自分の主張を支持してくれる弁護士を探すことに似ている気がします)

しかし、そのことを伏せて鑑定報酬の値下げ交渉までするのは。。

一般の民間企業であれば、比較的よくあるような光景ではないかなと感じますが、多数の利害関係者に重大な影響を与える可能性がある不動産鑑定業者を選ぶのにこのようなやり方は不適切であると感じます。

②不動産鑑定業者への不適切な働きかけ

特に大きな問題はこちらの方です。

AM会社は鑑定業者に対して、鑑定評価額が親会社の売却希望価格を上回るものとなるように、鑑定評価額を引き上げるための働きかけを行っていた。

AM会社は親会社の売却希望価格を実現させたかったのでしょうが、鑑定業者は独立した第三者機関として市場分析を踏まえた鑑定評価を行っています。

鑑定評価額を親会社の売却希望価格を超えるように働きかけることは、依頼者プレッシャーだけでなく、利益相反の観点からも問題になります。

利益相反の観点

親会社は所有している不動産を市場価値よりも高額で売却することにより、多くの売却益を手に入れることができます。

一方で、グループ会社である投資法人は市場価値よりも高い金額で不動産を取得することになり、J-REITの投資家が損失を被ることになります。

以上①、②ともに一貫して親会社の売却希望価格を通すために行われていますが、鑑定評価額を吊り上げようとする行為は投資家に対して不誠実です。

株価に与えた影響

勧告が公表された2022年6月17日(金)と6月20日(月)の終値と騰落率は次の通りです。

2022年
6月17日終値
2022年
6月20日終値
騰落率
㈱日本エスコン
(親会社)
762円732円▲3.93%
エスコンジャパンリート
(投資法人)
131,700円116,200円▲11.77%
㈱エスコンアセットマネジメント
(AM会社)
非上場非上場-

株式市場にしっかりと影響を及ぼしています。

市場参加者のコンプライアンス意識の高さがはっきりと表れていると感じました。

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不動産鑑定士

倉坂 和斗
倉坂 和斗税理士試験科目合格・宅地建物取引士・FP技能士
(公)日本不動産鑑定士協会連合会 会員
(公)東京都不動産鑑定士協会 会員

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