鑑定評価報告書と鑑定評価書

不動産鑑定業者が発行する成果物の名称は「鑑定評価書」であると「不動産の鑑定評価に関する法律」に定められています。
一方で「不動産鑑定評価基準」では「鑑定評価報告書」という表現が多く使われています。
今回はその違いについてそれぞれご紹介します。
内部書類 | 外部書類 |
---|---|
鑑定評価報告書 | 鑑定評価書 (調査報告書、意見書等) |
鑑定評価書と鑑定評価報告書
鑑定業者では「鑑定評価報告書」と「鑑定評価書」ははっきりと使い分けられています。
鑑定評価報告書

「鑑定評価報告書」は不動産鑑定業者に勤める不動産鑑定士が、不動産鑑定業者に交付するもので、鑑定評価の成果を報告し、自己の責任を明らかにするものです。

鑑定評価書

「鑑定評価書」は不動産鑑定業者が依頼者に対して鑑定評価の成果を報告するものです。

相違点
鑑定評価報告書 | 鑑定評価書 | |
---|---|---|
作成者 | 不動産鑑定士 | 不動産鑑定業者 |
交付先 | 不動産鑑定業者 | 依頼者 |
目的 | ・不動産鑑定士の責任を明らかにすること ・鑑定評価の成果を鑑定業者に報告すること | ・依頼者に鑑定評価の結果として交付すること |
署名義務 | なし | あり |
上述のとおり「鑑定評価報告書」と「鑑定評価書」は異なる部分はありますが、内容はほぼ同じです。
鑑定評価報告書の内容は、不動産鑑定業者が依頼者に交付する鑑定評価書の実質的な内容となるものである。
不動産鑑定評価基準 総論第9章
鑑定評価書と鑑定評価報告書の歴史
「鑑定評価書」も「鑑定評価報告書」も実質的に同じ内容なのであれば、別に使い分ける必要がないのではないかと思われるかもしれませんが、これには次のような経緯があります。
経緯
- 昭和39年より前は手書きによる鑑定評価書が多かった
- 不動産鑑定評価基準(昭和39年設定)では「不動産鑑定士等は鑑定評価書を作成すべき」と規定される
(「鑑定評価報告書」という文言はなし) - その後、不動産鑑定士が手書きした鑑定評価書をタイピストに依頼してタイプ製本することが一般的になる
- 昭和44年の不動産鑑定評価基準において、不動産鑑定士が作成するものは「鑑定評価報告書」であり、不動産鑑定業者がタイプ製本して依頼者に交付するものが「鑑定評価書」であるとされる
- その後基準に大きな変更はなく現在まで至る
まとめ
過去の不動産鑑定評価基準を読み、その歴史的な経緯を見てみると非常に面白いものです。
(おそらく鑑定士だけだと思いますが)
「何故こんな規定があるのか?」「変な文章だな~」「一文が長すぎる」等、これらの疑問がゆっくりとほぐれていきます。
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