”限定価格”と"正常価格”の違いについて

正常価格とは?
正常価格とは、簡単に言うと『特別な事情がない場合の適正な価格』のことです。
(正確には次のように規定されています。)
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
不動産鑑定評価基準 総論第5章 第2節
限定価格とは?
限定価格とは、簡単に言うと『併合、分割等の際に当事者間でのみ成立する価格』のことです。
不動産鑑定評価基準では、次のケースが示されています。
①借地権者が底地の併合をする場合
②隣接不動産の併合をする場合
③経済合理性に反する不動産の分割をする場合
具体的なケース(隣地不動産の併合)
Aさんは不整形な土地を所有しています。
賃貸用マンションを建てたいと思っていますが、自分の土地は不整形地なので良い形のマンションが建てられません。
そこで隣の土地のBさんの土地を購入の上、一体地にマンションを建てたいと考えています。

AさんはBさんの土地をいくらで買えば経済的に合理的でしょうか?
このような場合に"限定価格"の概念が必要となります。
念のため、もういちど限定価格とは何か確認しておきます。
限定価格とは、『併合、分割等の際に当事者間でのみ成立する価格』です。
つまり、『AさんはBさんの土地を併合しようとしており、市場がAさんとBさんに限定されている場合における適正な価格が限定価格』ということです。

上の図を使ってご説明します。
①Aさんの土地は不整形のため、15万円×350㎡=5250万円
②Bさんの土地は整形のため、20万円×150㎡=3000万円
③一体地としては整形のため、20万円×500㎡=10000万円
であったとします。
非常に簡単に書いていますが、実際に価格を算出するのは非常に困難です。
不動産鑑定士の活用をお勧めいたします。
Bさんの土地の正常価格は3000万円です。
では、AさんはBさんの土地をいくらで買うのが経済合理的でしょうか。
そもそもAさんの土地は不整形であり、Bさんの土地を併合することで整形地となり価値が増えます。
(AさんとBさんの土地の価格合計=8250万円に対して、一体地としての価格合計10000万円)
つまり一体地となることにより差額の1750万円の増分価値が発生しています。
この差額をAさんとBさんに配分して、限定価格が決まります。
結論
限定価格は”3000万円~4750万円”の間で決定することになります。
※差額の1750万円の配分方法は不動産鑑定士が決定します。
まとめ
このように限定価格とは、市場がAさんとBさんに限定されることで市場価値と離れてしまうというものになります。
今回は”隣接不動産の併合のケース”でしたが、”借地権者が底地を購入するケース””経済合理性に反する分割のケース”でもやはり市場価格と離れます。
限定価格は、当事者同士でいくら主張しても解決しません。(むしろトラブルになりがちです)
お互い気持ちよく納得して取引するためには、公正中立の第三者である不動産鑑定士を活用することが有効です。
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