はじめに
地球環境問題(地球温暖化・海洋汚染・水質汚染・大気汚染・森林破壊)が深刻になっている現代において、環境問題は非常に重要なテーマの一つです。
なかでも地球温暖化問題は、最も広域に影響を及ぼし深刻であるとも言われています。
国際的にも環境問題に真剣に取り組まれており、2016年に採択されたパリ協定では「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを目標としています。
その後、2017年にアメリカのトランプ大統領が、パリ協定からの離脱を宣言したことにより世界中が揺らぐなか、フランスのマクロン大統領の発言は胸に響きました。
「プランB(代替案)はない。地球Bはないからだ」
Emmanuel Jean-Michel Frédéric Macron
(Don’t be mistaken on climate; there is no plan B because there is no planet B)
(※アメリカはその後2021年2月にパリ協定に正式に復帰しています)
当社におきましても地球環境問題を重視し、不動産業界の環境への取組及びその成果を不動産鑑定評価に正確に反映するために日々研鑽をしております。
本ページでは、環境と不動産鑑定についてわかりやすくご紹介していきたいと思います。
「環境と不動産鑑定」について広く知って頂くことを目的としているため、正確性よりもわかりやすさを優先しておりますことをご了承ください。
環境と不動産
地球温暖化問題による意識が急速に高まっている昨今、建築物の環境性能も日進月歩で進化しています。
たとえば、次のようなものがあります。
分類 | 具体例 |
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省エネルギー | 外壁ダブルスキン 断熱材 LOWーeペアガラス等 |
自然エネルギーの利用 | ソーラーパネル 外気冷房システム 自然換気システム等 |
省資源、リサイクル | 雨水利用 ゴミ分別 再生可能エネルギー等 |
不動産鑑定士としては、これらの環境に配慮した不動産について、どのように鑑定評価を行うかがテーマとなります。
そこで本ページでは、次のようなコンテンツを設けています。
ESG関連の年表
本題に入る前に、ESGに関わる出来事の年表をご紹介します。
年 | 出来事 |
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2006年 | 責任投資原則(PRI)策定 |
2007年 | 責任不動産投資(RPI)策定 |
2015年 | GPIFが責任投資原則(PRI)に署名 |
2016年 | パリ協定採択 |
2020年 | 菅元首相が温暖化ガス排出2050年に実質ゼロを表明 |
2021年 | 地球温暖化対策推進法の改正 |
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責任投資原則(PRI)とは?
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責任投資原則(PRI)とは、投資の分析や意思決定のプロセスにESG(環境・社会・ガバナンス)の課題を組み込むべきとする原則です。
現在では世界中で3,000を超える機関がこの原則に署名しています。
PRIの6原則
原則1:ESGの課題を投資分析と意思決定プロセスに組み込むこと
原則2:アクティブオーナーとして、株式の所有方針と所有慣習にESGの課題を組み込むこと
原則3:投資対象の主体にESGの課題の適切な開示を求めること
原則4:資産運用業界の中で当原則が受け入れられ実行されることを促進すること
原則5:当原則の実行する際の効果を高めるために協働すること
原則6:当原則の実行に関して活動や進捗の状況を報告すること
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責任不動産投資(RPI)とは?
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責任不動産投資(RPI)とは、不動産投資戦略の中でESG項目を考慮することをいいます。
責任不動産投資の対象の考え方をわかりやすくしたものが次の10か条の戦略です。
10か条の責任不動産投資戦略
1.省エネルギー(省エネルギーのための設備改良、グリーン発電およびグリーン電力購入、エネルギー効率の高い建物など)
2.環境保護(節水、固形廃棄物のリサイクル、生息地保護など)
3.自発的認証制度(グリーンビルディング認証、認証を受けた持続可能な木材による仕上げなど)
4.歩行に適した都市整備(公共交通指向型都市開発、歩行に適したコミュニティ、複合用途開発など)
5.都市再生と不動産の利用変化への柔軟性(未利用地開発、柔軟に変更可能なインテリア、汚染土壌地の再開発など)
6.安全衛生(敷地内の保安、自然災害の防止策、救急対応の備えなど)
7.労働者福祉(構内託児所、広場、室内環境のクオリティー、バリアフリーデザインなど)
8.企業市民(法規の遵守、持続可能性の開示と報告、社外取締役の任命、国連責任投資原則のような任意規約の採択、ステークホルダーとの関わりなど)
9.社会的公正性とコミュニティ開発(低所得者向け住宅供給、コミュニティの雇用研修プログラム、公正な労働慣行など)
10.地域市民としての活動(質の高いデザイン、近隣への影響の極小化、地域に配慮した建設プロセス、コミュニティ福祉、歴史的な場所の保護、不当な影響の排除など)
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GPIFとは?
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GPIF(Government Pension Investment Fund)とは年金積立金管理運用独立行政法人のことです。
GPIFは、運用資産額151 兆円の世界最大級の年金基金であるため、GPIFが環境に配慮する動きを見せることによって他の投資家に大きな影響を与える可能性があります。
コンテンツのご紹介
ESG不動産とは?
- ”E”→環境(Environment)
- ”S”→社会(Social)
- ”G”→企業統治(Governance)
認証制度
- CASBEE
(Comprehensive Assessment System for Built Environment Efficiency) - LEED
(Leadership in Energy and Environmental DesignLeadership) - DBJ Green Building認証
(Development Bank of Japan)
ESG不動産の鑑定評価
- 対象不動産の確定
- 資料の収集
- 価格形成要因の分析
- 鑑定評価手法の適用
- 試算価格の調整
参考文献
- 環境を考えた不動産は価値が上がる
(日本不動産鑑定士協会連合会) - オフィスビル性能等評価・表示マニュアル
(BELCA・日本不動産鑑定士協会連合会)
- 不動産鑑定評価におけるESG配慮に係る評価に関する検討業務
(国土交通省) - 不動産鑑定評価における環境性、快適性、健康性の評価に関する検討業務
(国土交通省) - 環境不動産等の不動産鑑定評価のあり方の調査
(国土交通省)
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