最有効使用の原則の意義
不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用(以下「最有効使用」という。)を前提として把握される価格を標準として形成される。
この場合の最有効使用は、現実の社会経済情勢の下で客観的にみて、良識と通常の使用能力を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものである。なお、ある不動産についての現実の使用方法は、必ずしも最有効使用に基づいているものではなく、不合理な又は個人的な事情による使用方法のために、当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意すべきである。
不動産鑑定評価基準 総論第4章Ⅳ
最有効使用の原則は、鑑定評価固有の原則でとても重要な原則です。
最有効使用とは?
鑑定評価基準上、最有効使用とは「その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用」と定義されていますが、わかりにくいので簡単に具体例を使ってご説明します。
土地の最有効使用
土地は「用途の多様性」という特性により様々な需要が考えられます。
例えばまったく同じ土地であってもその土地を欲しがる人の目的は異なります。
この土地の上に庭の広い戸建住宅を建てたいなぁ。予算は5000万円位が限度かな。
土地の上に店舗を建てたい!7000万円までなら採算が合いそうだ。
土地の上に貸し事務所を建てたい!1億円で土地を購入しても十分な収益がでそう。
さて、この土地が欲しいAさん、Bさん、Cさんが登場しましたが、この土地に対して最も高い価格(1億円)を提示できたのはCさんです。
では何故Cさんが一番高い価格を提示できたかというと、その土地の最も有効な使用方法を前提としたからです。(この土地の場合は事務所)
したがって、この土地の価格は1億円を標準として決定されることになります。(≒最有効使用の原則)
ただし、いくら高い価格を提示しても特別な事情がある場合や不合理な使用方法に基づく場合は最有効使用とはいいません。
TV番組の企画でこの土地で野菜を育てたい。たとえ2億円でも購入します。
このようにDさんは、最も高い価格(2億円)を提示していますが、「良識と通常の使用能力を持つ人による最高最善の使用方法」とは言えませんので、農地としての使用方法は最有効使用とはなりません。
したがって、この土地の価格は2億円を標準として形成されるものではありません。
土地建物一体の不動産の最有効使用
土地建物一体の不動産の最有効使用の判定は、次のいずれかになります。
⑴現況継続
⑵用途変更
⑶建物取壊し
⑴現況継続
現況の建物が土地の最有効使用と一致している場合には、現況建物を継続使用することが土地建物一体としての最有効使用と判定します。
⑵用途変更
現況の建物が土地と不適応である場合には、建物用途を変更したり、増改築することが土地建物一体の最有効使用と判定される可能性があります。
⑶建物取壊し
建物が老朽化していたり、全くの場違い建物である場合には、建物を取壊して更地化することが土地建物一体の最有効使用と判定される可能性があります。
このように土地建物一体の最有効使用の判定にあたっては、⑴現況継続、⑵用途変更、⑶建物取壊しのどれが最も価値が高くなるかを判定する必要があります。
鑑定評価と最有効使用の原則
不動産鑑定評価においては、必ず「最有効使用」を判定しなくてはいけません。
最有効使用の判定は、市場分析、地域分析及び個別的要因の分析を通じて最終的に判定されます。
他の原則との関係
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