このページでは「営業補償」のうち「営業休止補償」についてわかりやすさを重視してご紹介しております。
実際案件の際には必ず専門家にご相談ください。

全体像

このページでは上図のうち「⑤営業補償」の内容について、わかりやすくご紹介します。

営業休止補償の意義

損失補償基準には次のように規定されています。

第44条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。

公共用地の取得に伴う損失補償基準 令和2年1月31日

営業休止補償の内容

営業補償は次のような内容の補償となります。

  • 固定的な経費の補償
  • 従業員に対する休業手当相当額の補償
  • 休業期間中の収益減(または所得減)の補償
  • 一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額の補償
  • 商品、仕掛品等の減損の補償
  • 移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額の補償

上記内容の補償にあたってはまず「通常休業を必要とする期間(≒補償期間)」を決める必要があります。

補償期間はどれくらい?

補償期間の査定にあたっては、次の規定が参考になります。

通常休業を必要とする期間は、別表第4(建物移転工法別補償期間表)による期間に前後の準備期間を加えた期間を標準とし、借家人が移転する場合又は建物の移転が構外再築工法による場合は、その規模、業種設備等の移転期間及び準備期間等を考慮し、2か月の範囲内で相当と認める期間とする。
ただし、特殊な工作機械等があり、その移転に相当期間を要する場合は、その実情に応じて定めるものとする。

損失補償基準細則 第27-1 (下線著者)

営業休止の期間については、想定される移転作業の内容を考慮して決められるが、公共用地の取得に伴う損失補償の実務では、一般に0.5ヵ月とするものが大半である。

研究報告 借家権の鑑定評価に係る論点整理  日本不動産鑑定士協会連合会

➀固定的な経費の補償

固定的な経費とは、休業期間中も発生する費用のことを言います。

例えば公租公課、水道光熱費の基本料金、休業期間中の減価償却費、従業員のための法定福利費等があります。

算定式

年間固定的経費認定額(※)×1/365×補償期間(日)

(※)算定要領に固定経費認定表が定めれていますが、分量が多いため割愛します。

②従業員に対する休業手当相当額の補償

店舗移転により休業しなければならない期間中の従業員への休業手当相当額の補償です。

算定式

平均賃金×補償率(※)×補償期間(日)

(※)80 / 100 を標準として60 / 100~ 100 / 100 の範囲の率

③休業期間中の収益減(または所得減)の補償

休業期間中、仮に営業を続けていたら得られたであろう収益(≒営業利益)の補償となります。

算定式

年間の認定収益額(※)×1/365×補償期間(日)

(※)本来の営業目的に関連した売上-本来の営業目的に関連した費用

④一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額の補償

店舗移転によって、常連のお客様が一時的にいなくなってしまうことによる損失の補償です。

次のような算定式で求めます。

算定式

従前の1か月の売上高(※1)×売上減少率(※2)×限界利益率(※3)

(※1)年間の売上高÷12か月
(※2)売上減少率表による
(※3)(固定費+利益)÷売上高 または (売上高-変動費)÷売上高

⑤商品、仕掛品等の減損の補償

商品、仕掛品等を移転する際に生ずる破損、荷ずれ、荷痛みなどによる減損の補償は、動産移転の際に割増料金や運送保険等を補償することにより対処がなされることが多いことから、補償の実務では、当該補償を考慮しないことが多いようである。

研究報告 借家権の鑑定評価に係る論点整理  日本不動産鑑定士協会連合会

減損の補償について規定されていますが、営業休止期間は通常短期間であることから、この項目が考慮されるケースは限定的のようです。

⑥移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額の補償

店舗が移転する場合には通常移転広告等が発生しますので、その費用等の補償です。

基準第48条第1項第4号に規定する移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額の補償は、当該地域の実情、営業所の業種、規模及び商圏の範囲等に応じ、次を参考に算定するものとする。

営業補償調査算定要領

参考

(一)移転広告費等
 イ.移転広告費
(広告枚数×印刷・用紙代+諸経費)×回数
 ロ.移転通知費
移転通知枚数×印刷・葉書代+諸経費

(二)開店費用等
 イ.開店祝費
 招待客数×(招待状代+印刷代+封書代+切手代+酒肴代+記念品代+諸経費)
 ロ.粗品費
 顧客数×粗品代
 ハ.捨て看板費
 本数×看板費単価

(三)その他の費用
 法令上の手続及びその他の諸経費、野立看板の書替えに要する費用、営業用自動車の車体文字の書替えに要する費用等

その他 立退料の構成要素

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