※このページは「不動産鑑定評価基準」に記載の内容をもとに作成しております。
「借家権」と「立退料」の関係は、裁判例等により多数の見解があり、現行の「不動産鑑定評価基準」の記載のみでは対応できない場合があることを予めご了承ください。
借家権とは?
不動産鑑定評価基準では次のように記載されています。
借家権とは、借地借家法(廃止前の借家法を含む。)が適用される建物の賃借権をいう。
不動産鑑定評価基準 各論第1章第3節
借家権の鑑定評価を行う場合は次のケースが規定されています。
- ①借家権の取引慣行がある場合
- 鑑定評価基準には「借家権の取引慣行があるケース」の評価方法を規定していますが、現実に借家権の取引慣行があるケースというのは極めて稀なケースであると考えられます。
- ②不随意の立退きの場合
- こちらが一般的なケースになるかと思いますが、鑑定評価基準の内容は経費補償にかかる部分の記載がないため問題となります。
(経費補償≒移転補償、営業補償等)
借家権の鑑定評価手法
鑑定評価基準においては借家権の鑑定評価手法として4手法定められていますが、比準価格は現実的に適用が不可能であると思われますので、割愛しています。
①借家権の取引慣行がある場合の鑑定評価
①の場合の借家権の評価方法は次の通りです。
当事者間の個別的事情を考慮して求めた比準価格を標準とし、自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を比較考量して決定するものとする。借家権割合が求められる場合は、借家権割合により求めた価格をも比較考量するものとする。
不動産鑑定評価基準 各論第1章第3節Ⅰ
簡単にいうと、「比準価格」を標準として、「控除法による価格」を比較考量し、さらに可能な場合には「割合法による価格」を比較考量するということになります。
先述した通り、現実的には借家権の取引慣行があるケースは極めて稀です。
②不随意の立退きの場合
②の場合の借家権の評価方法は次の通りです。
当該建物及びその敷地と同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料と現在の実際支払賃料との差額の一定期間に相当する額に賃料の前払的性格を有する一時金の額等を加えた額並びに自用の建物及びその敷地の価格から貸家及びその敷地の価格を控除し、所要の調整を行って得た価格を関連づけて決定するものとする。
不動産鑑定評価基準 各論第1章第3節Ⅲ
簡単にいうと「差額賃料法」と「控除法による価格」を関連付けて決定するということになります。
総合的勘案事項
借家権の鑑定評価にあたっては①、②いずれの場合も次の事項を総合的に勘案するものと規定されています。
1.将来における賃料の改定の実現性とその程度
不動産鑑定評価基準 各論第1章第2節Ⅱ
2.契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
3.将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
4.契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
5.貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り
6.借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借をいう。)か否かの別
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