貸家及びその敷地

貸家及びその敷地とは?

不動産鑑定評価基準による定義は次の通りです。

貸家及びその敷地とは、建物所有者とその敷地の所有者とが同一人であるが、建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地をいう。

不動産鑑定評価基準 総論第2章第2節Ⅱ

つまり、建物と土地の所有者が同じ人だけど、その建物が他人に賃貸されている状態の土地と建物の事を言います

なお、土地が借地権である場合には別の類型(借地権付建物)になります。

最有効使用の判定

貸家及びその敷地の場合でも、最有効使用の判定を行いますが自用の建物及びその敷地の場合と少し異なります。

なお、最有効使用とは不動産鑑定の最も重要な考え方で、『その不動産の価格は、その不動産の一番良い使用方法を前提として決まる』というものです。
自用の建物及びその敷地の最有効使用の場合次の3種類の考え方がありました。

①現況を継続することが最有効使用
建物の築年も新しく、周辺が閑静な住宅街であれば、問題なく現況継続が最有効使用となります。
②用途変更等をすることが最有効使用
例えば、賃貸需要が非常に大きく高額の賃料をとれる場合には、賃貸用物件に用途変更することが最有効使用になる場合があります。
③建物を取壊すことが最有効使用
築60年が過ぎ、ボロボロの旧耐震物件の場合などは建物を取壊して更地化することが最有効使用になる場合があります。

自用の建物及びその敷地の場合には、上記のように最有効使用を判定しましたが、貸家及びその敷地の場合には、借家人が居付きの状態であることから用途変更や建物取壊しには制約があります。(ただし、借家人の退去や移転を合理的に想定し得る場合には用途変更や取壊しも想定し得ます)

評価方法

①貸家及びその敷地の評価方法(原則)

不動産鑑定評価基準には次のように定められています。

貸家及びその敷地の鑑定評価額は、実際実質賃料(売主が既に受領した一時金のうち売買等に当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まないものとする。)に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし、積算価格及び比準価格を比較考量して決定するものとする。

不動産鑑定評価基準 各論第1章


貸家及びその敷地は、通常購入者自らが使用するものではなく、その賃料収入に着目して購入するものであるため、評価にあたっても収益価格が標準となります。
積算価格と比準価格は比較考量という位置づけです。

また、貸家及びその敷地の評価にあたって次の事項を総合的に勘案する必要があります。

1.将来における賃料の改定の実現性とその程度
2.契約に当たって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
3.将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
4.契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
5.貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り
6.借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借をいう。)か否かの別
7.借家権価格

不動産鑑定評価基準 各論第1章

収益還元法の意義解説

取引事例比較法の意義解説

原価法の意義解説


このように価格の三手法を併用しますが、特に収益価格を重視して鑑定評価額を決定します。
※ただし、実務上土地建物一体としての取引事例比較法はその要因比較が困難であることから適用しないのが一般的です。

②敷地が最有効使用でない場合

現状の建物が老朽化等で建物と敷地が不適合の場合には、建物の修繕、模様替え等が客観的に妥当で、かつ、これに伴う賃料値上げが可能であると認められる場合には、これらの収益の増加と費用を考慮して求める必要があります。

鑑定評価基準上の表現

鑑定評価基準に出てくる試算価格の重みづけは、次のような表現がありますが、重要視する順番は次の通りです。

重要視する順番表現
1標準(1つの手法を重視する場合の表現)
1関連付けて(2つ以上の手法を併用して重視する場合の表現)
3比較考量
4参考
5検証

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