基準に規定のない手法

不動産鑑定評価基準には「平均的活用利子率法」という手法は定められていません。

不動産の賃料を求める鑑定評価の手法は、新規賃料にあっては積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等があり、継続賃料にあっては差額配分法、利回り法、スライド法、賃貸事例比較法等がある。

不動産鑑定評価基準 総論第7章第2節

しかし、基準の文言を見ると、「~等がある。」とされていることから他の手法も黙示的に認められると解釈されます。

不動産鑑定評価基準に載っていない方法を使うのはマズい?

鑑定評価基準に記載されていないことをすると「鑑定評価基準違反だ」「不当鑑定だ」という方がいらっしゃるそうです。
(幸いなことに私はお会いしたことはありません)

たしかに不動産鑑定評価基準は不動産鑑定士が守らなければならない規範ですが、評価技術の進歩改善を妨げるものでもありません。
したがって、基準にある方法を適用したうえで追加項目として適用するのであれば問題ないと考えます。

不動産鑑定評価基準は制定日から今日まで進歩改善されてきたことを忘れるべきではありません。

この手法は実務上適用される場合がありますのでご紹介します。

平均的活用利子法の意義

平均的活用利子法は

「土地価格に平均的活用利子率を乗じて継続地代を求める手法」

と言えます。

平均的活用利子率とは

日税不動産鑑定士会発行の「継続地代の実態調べ」で使用される用語です。

「土地価格」を元本としたときの「継続地代」の割合を「活用利子率」と呼びます。

そのうち、特に活用利子率の平均的割合を求めたものを「平均的活用利子率」と呼びます。

この手法は、土地価格と地代の間にみられる関係性に着目して、土地の地代にアプローチするものです。

意義の解説

大まかな構成は次の通りです。

土地価格】に【平均的活用利子率】を乗じたものが【平均的活用利子率法による地代】となります。

それぞれの構成要素について見ていきます。

土地価格

土地価格は対象地の土地価格を用います。

対象地の土地価格の求め方は次の2通り考えられます。

  • 鑑定評価手法(取引事例比較法・土地残余法等)によって求めた土地価格
  • 対象地前面道路の相続税路線価を0.8で割り戻して求めた土地価格

原則的にはを用いるべきです。

ただし、次にご説明する「平均的活用利子率」がの方法を前提とした数値であるため、検証値としては有用であると考えます。

平均的活用利子率

平均的活用利子率は先述したとおり、日税不動産鑑定士会の調査に基づき、統計的にまとめられたもので具体的には次のように求められます。

年額地代÷土地価格=活用利子率

土地価格
公示地価ベースの更地価格です。
具体的には相続税路線価を0.8で割り戻した数値が使用されます。
年額地代
権利金等の一時金を考慮しない「支払地代」ベースの地代です。
一体不動産

なお、角地や敷地が奥まっている土地については一定の補正が行われ、また、極端に利回りが高い事例は排除されています。

以上のように地域の標準的な利子率が得られるように配慮されている数値が平均的活用利子率なのです。

「継続地代の実態調べ」では①商業地②住宅地に分けて平均的活用利子率を算定しています。

①商業地

年度平均的活用利子率
平成12年1.27%
平成15年1.35%
平成18年1.41%
平成21年1.11%
平成24年1.37%
平成27年1.19%
平成30年1.10%
令和3年1.01%
日税不動産鑑定士会 継続地代の実態調べより数値を引用

②住宅地

年度平均的活用利子率
平成12年0.69%
平成15年0.80%
平成18年0.83%
平成21年0.76%
平成24年0.79%
平成27年0.72%
平成30年0.70%
令和3年0.67%
日税不動産鑑定士会 継続地代の実態調べより数値を引用

平均的活用利子率法による地代

以上より「土地価格」に「平均的活用利子率」を乗じることより、地代をもとめます。

有効性

この手法を適用するためには、土地価格と支払地代の関係を示すデータを豊富に収集できることが必要です。

具体的には日税不動産鑑定士会の「継続地代の実態調べ」等の実証的なデータがな必要ですが、東京都以外ではこのような研究成果物がないことが多いので、適用が困難な場合があります。

平均的活用利子率法は、契約の個別性等を反映させることが難しいですが、地代水準の検証という意味において非常に役に立つ手法です。

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