ESG不動産の鑑定評価
現状においては不動産鑑定評価基準には詳細な記載がなく、解釈の余地が大きく残されております。
このページでは、国土交通省の公表資料、連合会による研究報告及び研修資料、BELCAの書籍等による内容を総合的に踏まえて「ESG不動産の鑑定評価」と記載をさせて頂いておりますが、当社の解釈による部分も多くございます。
平成30年3月28日に国土交通省から「ESG投資の普及促進に向けた勉強会」の検討資料が公表されました。
ここには、不動産鑑定評価への反映について次のように記載されています。
その後、令和元年5月に「ESG不動産投資の不動産の鑑定評価への反映」という研究報告が連合会でされております。
今後環境への関心が高まっていく中、不動産鑑定評価基準への反映も期待されるところです。
鑑定評価の基本的事項の確定
環境性・快適性・健康性等に係る設備・家具・什器等が鑑定評価の対象に含むのか否かを確定する必要があります。
家具・什器等は動産であるため、不動産の鑑定評価の対象から外れると位置づけれられていますが、これらが不動産と一体となって効用を発揮している場合には、これらの存在を所与として鑑定評価をすることができると考えられています。(※議論があるところです)
対象不動産の確認
環境性、快適性、健康性のために設置した資産の範囲と当該資産が、オーナー資産かテナント資産かの財産区分を確認する必要があります。
また、現地調査においては次のような事項を確認します。
項目 | 現地調査確認(例示) |
---|---|
環境性 | ダブルスキン、LOW-e-ペアガラス、緑化、ソーラーパネル、風力発電機、ゴミの分別、雨水ろ過装置 |
快適性 | 騒音、明るさ、トイレの機能・清潔感、バリアフリー |
健康性 | リフレッシュルーム、空調、光環境 |
資料の収集及び整理
対象不動産が認証機関による認証(CASBEE・LEED・DBJ等)を受けている場合には、それらの資料を収集して整理する必要があります。
認証がない場合には、依頼者様・管理会社様から竣工図、設計図書、修繕履歴等の資料をなるべく多く入手します。
それらの資料によって、省エネルギーに関する建築的手法や設備的手法の有無がある程度わかります。
(例:断熱材、VAVシステム、インバーター設置、全熱交換器等)
資料の検討及び価格形成要因の分析
①市場参加者の特性の把握
不動産鑑定評価においては、地域分析及び個別的要因の分析と共に市場分析が重視されます。
たとえば、
◇ESG配慮を重視する市場参加者(機関投資家や大企業等)
◇ESG配慮をそこまで重視しない市場参加者(中小企業や個人等)
では、ESGに係る価格形成要因が不動産価格に及ぼす影響の程度が異なりますので、市場参加者の把握が重要になります。
②将来的な価値下落リスク
今後、ESG要因が非常に重視される社会になった場合には、環境性・快適性・健康性に劣る不動産の価値は、将来的に大きく下がる可能性があることを念頭に常に市場観察をする必要があります。
鑑定評価手法の適用
原価法
原価法においては「再調達原価」と「減価修正」で考慮する方法が考えられます。
【再調達原価】
・認証機関による認証取得コストを加算
・ESGに配慮した設備・備品等が対象不動産に含まれる場合にはこれらの価格を加算
【減価修正】
・認証取得している場合としていない場合で減価額・経済的残存耐用年数に適切に反映
※認証取得していなくてもESGに配慮しているのであればそれらを反映
・ESGに配慮した設備・備品等が対象不動産に含まれる場合にはこれらの減価修正を行う。
収益還元法
収益還元法においては「運営収益」「運営費用」「利回り」で考慮する方法が考えられます。
【運営収益】
・認証取得している場合にはその優位性を考慮する。
・月額実質賃料にすでに反映されている可能性に留意する。
【運営費用】
・省エネ設備として、LED証明、自然採光システム等が設置されている場合のコストの実績値を把握する。
・設備の維持管理・修繕費用等に留意する
【利回り】
・市場観測により具体的な根拠に基づいて判断する。
・賃料と利回りの両方に織り込まれないように留意
取引事例比較法
現状、複合不動産の鑑定評価では取引事例比較法の適用が困難とされています。
ただし、今後の鑑定評価技術の発展の可能性も踏まえESG要因資料を収集して蓄積することが必要とされています。
【建物比較】
「オフィスビルの性能等評価・表示マニュアル」を活用した格差率によって建物比較をする方法が考えられます。
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