このページでは「移転雑費」についてわかりやすさを重視してご紹介しております。
実際案件の際には必ず専門家にご相談ください。

全体像

このページでは上図のうち「④移転雑費」の内容について、わかりやすくご紹介します。

移転雑費の意義

損失補償基準には次のように規定されています。

第37条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合又は従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等(以下「代替地等」という。)を取得し、若しくは使用する場合において、移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、転居通知費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものとする。

公共用地の取得に伴う損失補償基準 令和2年1月31日

移転雑費の内容

「移転雑費」とは立退きにより必要な補償のうち、「動産移転料」「工作物補償」「営業補償」等以外の雑費を言います。

「移転雑費」には次のようなものがあります。

  • 移転先選定費用
  • 法令上の手続き費用
  • 就業不能補償
  • 移転通知費
  • 移転旅費

➀移転先選定費用

引越し先を決めるために必要となる費用のことです。

「自己選定」と「業者選定」の2種類ありますが、通常移転先を選ぶためには宅建業者に依頼することから「業者選定」が一般的です。

算定式

(日当及び交通費×選定に要する日数)+宅建業者報酬

選定に要する費用は、業者選定の場合3日間と規定されています。(損失補償基準細則 別表7)

宅建業者報酬は通常、新たな借家賃料の1か月分を計上します。

②法令上の手続き費用

「法令上の手続き費用」とは、次のような費用です。(借家の場合)

(四) 建物等の移転又は代替地等の取得若しくは使用に伴い必要となる住民登録、印鑑証明、転出・転入証明等の官公署等に対する法令上の手続に要する費用
(五) (一)から(四)までの手続のために必要な交通費及び日当

損失補償基準細則 第21-3

算定式

(日当及び交通費×選定に要する日数)+官公庁等に対する費用

借家人が個人の場合には、住所変更届等に要する日数として0.5日と規定されています。(算定要領)

借家人が法人の場合には、通常移転登記申請が必要となるため登録免許税が3万円ないし6万円発生します。

③就業不能補償

就業不能補償については日本不動産鑑定士協会連合会の研究報告がわかりやすいので下記の通り引用させていただきます。

就業不能補償とは、移転先選定、移転前後の動産整理、移住、法令上の手続き等により、通常、就業できないことにより通常生じる損失補償をいい、計算式は、「就業不能補償=補償日数×平均労働賃金」である。
補償日数については、住宅の場合、用対連基準細則別表第7 より、自己選定の場合15 日、業者選定の場合8 日としている。

研究報告 借家権の鑑定評価に関する論点整理 日本不動産鑑定士協会連合会

算定式

補償日数×平均労働賃金

④移転通知費

移転通知費は次の通り規定されています。

(一) 書状による転居通知のための費用
(二) 当該地域の慣習による引越あいさつのための物品の購入費用

損失補償基準細則 第21-4

ただし、店舗の場合には「営業補償の移転広告費用」を計上するため、上記の移転通知費は計上しないのが一般的とされています。

⑤移転旅費

移転旅費は、引越に伴う居住者の旅費をいい、通常は住宅の場合にのみ計上される費用です。

算定式

(交通費+家族人数×日当)×移転回数

その他 立退料の構成要素

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