正常価格の意義
正常価格とは、市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格をいう。
この場合において、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場とは、以下の条件を満たす市場をいう。
(不動産鑑定評価基準 第5章第3節Ⅰ1)
「合理的と考えられる条件を満たす市場」を大まかに分類すると次の通りです。
(1)市場参加者
(2)取引形態
(3)公開期間
以下、基準の文言を引用します。
(1)市場参加者が自由意思に基づいて市場に参加し、参入、退出が自由であること。
なお、ここでいう市場参加者は、自己の利益を最大化するため次のような要件を満たすとともに、慎重かつ賢明に予測し、行動するものとする。
① 売り急ぎ、買い進み等をもたらす特別な動機のないこと。
② 対象不動産及び対象不動産が属する市場について取引を成立させるために必要となる通常の知識や情報を得ていること。
③ 取引を成立させるために通常必要と認められる労力、費用を費やしていること。
④ 対象不動産の最有効使用を前提とした価値判断を行うこと。
⑤ 買主が通常の資金調達能力を有していること。(2)取引形態が、市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないこと。
(3)対象不動産が相当の期間市場に公開されていること。
(不動産鑑定評価基準 第5章第3節Ⅰ1)
意義の解説
市場参加者について
市場参加者の要件が掲げられています。
基準の通りですが、④最有効使用を前提とした価値判断が最も重要です。
取引形態
取引形態は市場参加者が制約されたり、売り急ぎ、買い進み等を誘引したりするような特別なものではないことが必要です。
公開期間
公開期間については、対象不動産の情報が公開され、需要者に十分浸透している状況をされている必要があります。
正常価格と現実の取引価格
項目 | 正常価格 | 現実の取引価格 |
---|---|---|
市場概念 | 現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる市場 | 個人的な事情が存在する現実の市場 |
妥当する範囲 | 社会一般にとって妥当する価格 | 取引当事者間でのみ妥当する価格 |
判断主体 | 不動産鑑定士 | 取引当事者 |
求め方 | 価格の三面性を考慮して求める | 取引の事情に応じて決定する |
正常価格は経済学の完全競争市場に近似する市場概念を前提としますが、現実の市場は必ずしもこれらの条件を満たしません。
したがって現実の取引価格と正常価格は必ずしも一致しません。
複合不動産の正常価格
複合不動産の正常価格は最有効使用の原則により、次のいずれかのうち最も高い価格になります。
①現況建物を継続しようする場合の価格
②建物を用途変更後の価格に用途変更費用を勘案した場合の価格
③建物を取壊後の更地価格から建物取壊し費用を控除した価格
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