調査範囲等条件

調査範囲等条件の意義

不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因が存する場合、当該価格形成要因について調査の範囲に係る条件(以下「調査範囲等条件」という。)を設定することができる。

不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節Ⅲ

~条件設定の必要性~
不動産鑑定士が土壌汚染やアスベストなど専門性の高い価格形成要因についての判断を行う場合、他の専門家による調査が必要です。
この場合、他の専門家の調査を行ってから鑑定評価をするのが最善ですが、依頼者の事情(費用・期間)により現時点では他の専門家による調査が行われず、条件設定の要件(実現性・合法性)を満たさない場合も少なくありません。

そこで、不動産鑑定士による調査範囲を限定したり、価格形成要因を除外したりして鑑定評価を行う条件を『調査範囲等条件』といいます。
以下、調査範囲等条件についてご紹介します。

調査範囲等条件の具体例

不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因を例示すれば、次のとおりである。

(ア)土壌汚染の有無及びその状態
(イ)建物に関する有害な物質の使用の有無及びその状態
(ウ)埋蔵文化財及び地下埋設物の有無並びにその状態
(エ)隣接不動産との境界が不分明な部分が存する場合における対象不動産の範囲

不動産鑑定評価基準運用上の留意事項

調査範囲等条件を設定するための要件

調査範囲等条件を設定するための要件をご説明します。

ただし、調査範囲等条件を設定することができるのは、調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限る。

不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節Ⅲ

調査範囲等条件設定の要件

・鑑定評価書の利用者の利益を害する恐れがないこと

特定の価格形成要因について調査範囲等条件を設定しても鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合を例示すれば、次のとおりである。

(ア)依頼者等による当該価格形成要因に係る調査、査定又は考慮した結果に基づき、鑑定評価書の利用者が不動産の価格形成に係る影響の判断を自ら行う場合
(イ)不動産の売買契約等において、当該価格形成要因に係る契約当事者間での取扱いが約定される場合
(ウ)担保権者が当該価格形成要因が存する場合における取扱いについての指針を有し、その判断に資するための調査が実施される場合
(エ)当該価格形成要因が存する場合における損失等が保険等で担保される場合
(オ)財務諸表の作成のための鑑定評価において、当該価格形成要因が存する場合における引当金が計上される場合、財務諸表に当該要因の存否や財務会計上の取扱いに係る注記がなされる場合その他財務会計上、当該価格形成要因に係る影響の程度について別途考慮される場合

不動産鑑定評価基準運用上の留意事項

条件設定の制限

証券化対象不動産(各論第3章第1節において規定するものをいう。)の鑑定評価及び会社法上の現物出資の目的となる不動産の鑑定評価等、鑑定評価が鑑定評価書の利用者の利益に重大な影響を及ぼす可能性がある場合には、原則として、鑑定評価の対象とする不動産の現実の利用状況と異なる対象確定条件、地域要因又は個別的要因についての想定上の条件及び調査範囲等条件の設定をしてはならない。
ただし、証券化対象不動産の鑑定評価で、各論第3章第2節に定める要件を満たす場合には未竣工建物等鑑定評価を行うことができるものとする。

不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節Ⅳ

条件設定に関する依頼者との合意

1.条件設定をする場合、依頼者との間で当該条件設定に係る鑑定評価依頼契約上の合意がなくてはならない。
2.条件設定が妥当ではないと認められる場合には、依頼者に説明の上、妥当な条件に改定しなければならない。

不動産鑑定評価基準 総論第5章第1節Ⅴ

調査範囲等条件の設定例

「土壌汚染の状況に関する」調査範囲等条件を設定した場合の、鑑定評価書への記載例をご紹介します。

対象とする価格形成要因
土壌汚染の有無及びその状態
調査範囲
実地調査及び土壌汚染対策法及び関連法令等の調査
評価上の取扱い
価格形成要因から除外する
条件設定の合理的理由
本鑑定評価は対象不動産の売買の参考とするものであり、予定されている売買契約書において、土壌汚染に 係る調査及び土壌汚染が存した場合の措置についての約定がなされる予定であり、鑑定評価書の利用者は当該内容を約定することによるリスクを十分に認識しているものと判断される。