限定価格の意義
価格の種類には、正常価格、限定価格、特定価格、特殊価格があります。
今回は限定価格についてご紹介します。
限定価格とは、市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいう。
(不動産鑑定評価基準 第5章第3節Ⅰ2)
非常に読みずらい文章ですが、大まかに整理すると次のようになります。
⑴市場性を有する不動産の価格であること
⑵正常価格と同一の市場概念の元において形成される市場価値と乖離すること
⑶市場が相対的に限定されること
意義の解説
(1)市場性を有する不動産の価格であること
市場性を有する不動産とは、一般的に市場で取引が行われる不動産の事をいいます。
反対に市場性を有しない不動産とは、「文化財等の指定を受けた建築物」など通常市場で取引が行われないものをいいます。
(2)正常価格と同一の市場概念の元において形成される市場価値と乖離すること
「正常価格と同一の市場概念」を「合理的な市場」と換言すれば、「合理的な市場の価格」と異なるという意味になります。
合理的な市場価格と異なる理由は次の⑶の理由になります。
(3)市場が相対的に限定されること
不動産の併合や分割が伴う取引では、その取引当事者間でのみ経済合理性が認められる価格というものが存在します。
基準ではこのような場合を「市場が限定される」と表現しています。
そして市場が限定されることにより市場価格と乖離してしまうのです。
限定価格を求める場合
限定価格を求める場合を例示すれば、次のとおりである。
(不動産鑑定評価基準 第5章第3節Ⅰ2)
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合
(1)借地権者が底地の併合を目的とする売買に関連する場合
例えば、借地権者が底地を併合して自己所有の土地にしたい場合を想定します。
この場合、借地権者は市場価格よりも高い価格で底地を購入しても十分メリットがあります。
上記メリットがあるため、借地権者が底地を購入しようとするケースでは市場が借地権者と底地所有者に限定され、この場合の底地価格が限定価格となります。
なお、借地権者以外の第三者が底地を購入する場合は正常価格です。
(2)隣接不動産の併合を目的とする売買に関連する場合
上の図で、A土地所有者がB土地を併合をする場合を想定します。
この場合、A土地所有者はB土地を購入できれば、地形、接道、用途の多様性、設計の自由度等の観点からA土地を単独で所有するよりもメリットがあります(=増価)
一方B土地所有者は、A土地所有者以外に売れば市場価格でしか売れませんが、A土地所有者ならば市場価値よりも高く買うメリットがありますので、高く売れるA所有者に売却を考えます。
このような場合にA土地所有者とB土地所有者に市場が限定され、B土地の求める価格は限定価格となります。
(3)経済合理性に反する不動産の分割を前提とする売買に関連する場合
上の図で、当初A土地所有者がA土地の全てを所有してましたが、Cさんがどうしても点線部分の土地が欲しいと言ってきた場合を想定します。
この場合、Cさんは点線土地部分をどうしても購入したいわけですが、A土地所有者からしてみたら、C土地を市場価格で売ってしまったら地型、接道、用途の多様性、設計の自由度等が悪くなってしまい、売却後の土地単価が下落してしまいます。(=経済合理性に反する)
そこでAさんはCさんに「どうしても点線部分が欲しいなら市場価格よりも高く買ってくれるなら売る」ということになります。
一方、Cさんはどうしても点線部分の土地が欲しいわけですからその提案に応じます。
このような場合にAも土地所有者とCさんに市場が限定され、点線部分の土地を求める価格は限定価格となります。
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