改正の背景
従来の基準は、地価高騰を背景としたものでしたが、土地神話の崩壊と長引く地価下落によって、人々の不動産に対する価値観は「所有から利用へ」と大きく変化していきました。
さらには不動産の金融市場との融合やグローバル化の進展とともに、収益性をより重視した鑑定評価の要請が顕著になってきたことを背景に、平成14年基準では、次の点について改正されました。
改正の概要
- 価格概念の明確化
- 収益還元法の体系的整理
- 市場分析の重視
- 試算価格の調整の意義等の明確化
- 物件の詳細調査
- 記載事項の充実
価格概念の明確化
「正常価格の再規定」及び「従来の特定価格について特定価格と特殊価格に区分」が行われました。
正常価格
現実の社会経済情勢の下で成立する概念であることを再確認
「特定価格」を「特定価格」と「特殊価格」に区分
これまでの特定価格には特殊価格の概念も含まれていましたが、今回の基準改正によって特定価格と特殊価格に区分されました。
【特定価格】
「特定価格とは、市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的の下で、正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう。」
【特殊価格】
「文化財等の一般的に市場性を有しない不動産について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいう」
収益還元法の体系的整理
平成14年基準では、収益還元法の体系が整理されました。
直接還元法とDCF法の区分
【改正前】:直接還元法のみ
【改正後】:直接還元法とDCF法
還元利回り・割引率の意義と求め方を明示
証券化対象不動産の鑑定評価ではDCF法の適用を原則と規定
市場分析の重視
従来の地理的範囲を中心とした地域分析だけでなく、次の市場分析に相当する部分が明確に規定されました。
- 市場参加者の観点から把握すること
- 同一需給圏内の代替競争不動産の概念を導入
- 最有効使用の判断において土地の市場と土地建物の市場とは異なる場合があること
- 市場の特性について市場参加者の属性を把握すること
- 別的要因の分析について典型的需要者の行動などを把握すること
試算価格の調整の意義などの明確化
手法は一つの市場価格に接近する一側面にすぎず相互に密接に関連を有する手法であることが明確にされました。
これにより、試算価格等の調整においては、①再吟味、②説得力に係る判断の2段階からなるものと規定されました。
再吟味
「各手法の共通要因の整合性」の検討をすることが基準に明記されました。
説得力の判断
「地域分析及び個別分析と各手法の適合性」および「採用した資料の相対的信頼性」の検討をすることが基準に明記されました。
物件の詳細調査
不動産の証券化に伴う鑑定依頼者の専門性に対応して、①物件調査の精緻化、②他の専門家の調査資料の活用、③不動産鑑定士の調査の限界と対応方法について明確化されました。
これによって、
・土壌汚染・地下埋設物などの状況
・賃貸用不動産の経営管理の良否
・不明事項に関連した想定上の条件の付加
・合理的推定が認められる場合
などが明示されました。
記載事項の充実
依頼者に対する説明責任を強化する趣旨から、「鑑定評価額決定の理由の要旨」について必要的記載事項が充実されました。
その他の年の改正
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