改正の背景

昭和44年の基準から約20年が経過し、バブル経済のなか平成元年に土地の基本理念を定める土地基本法が制定されました。

また、国土利用計画法が制定され、鑑定評価の留意事項に関する建議書が発出されていたため、平成2年の基準は、土地基本法と建議書の趣旨を踏まえたものとして改正が行われました。

主な改正点

  • 「鑑定評価基準運用上の留意事項」の創設(以下「留意事項」)
  • 鑑定評価方式の充実
  • 価格・賃料の種類
  • 継続賃料の評価手法の整備
  • 貸家及びその敷地の収益価格

「留意事項」の創設

「留意事項」は当時の国土庁土地局長が、不動産鑑定評価基準の要点・趣旨・実務上留意すべきことを通知するという形で行われました。

目的

基準の要点及びその趣旨の周知徹底を図るとともに、新基準に新たに盛り込まれた事項を中心として適正な鑑定評価が実施されるように注意喚起すること。

位置づけ

新基準に基づいて不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価に従事するにあたって、本通知に従って適正な鑑定評価の実施に努めなければならないもの。

鑑定評価方式の充実

開発法の創設

分譲地やマンション分譲において適用される開発法という手法が規定

改正
1

土地残余法の再定義

改正前:地代を求める手法

改正後:土地の収益価格を求める手法

改正
2

区分地上権における「土地残余法に準じて求める収益価格」

区分地上権の鑑定評価においても、前記土地残余法に準じて求める方法が採用

改正
3

価格・賃料の種類の整理

正常価格と限定価格(併合・分割)のほかに、特定価格が定められました。

特定価格は、昭和44年基準で一度なくなりましたが、鑑定評価の範囲を拡大する観点から再び規定されました。

不動産の性格により一般的に取引の対象とならない不動産又は依頼目的及び条件により、一般的な市場性を考慮することが適当でない不動産の経済価値を適正に表示する価格

平成2年不動産鑑定評価基準

具体例として次のものが規定されていました。

イ 宗教建築物等の特殊な建築物の鑑定評価を行う場合

ロ 会社更生法による更正目的の財産の鑑定評価を行う場合

ハ 担保として安全性を考慮することが特に要請される場合

平成2年不動産鑑定評価基準

なお、賃料は、正常賃料、限定賃料(併合・分割)、ならびに継続賃料(新設)に区分されました。

継続賃料の評価手法の整備

改正前:実際支払賃料と経済価値に即応した適正な賃料との間において決定するものとし、この場合には、賃料の推移や底地利回りなどを総合的に勘案して求めるものとされていました。

改正後:実際支払賃料との差額に着目した「差額配分法」、総合的勘案事項のうち賃料の推移にかかわる考え方を「スライド法」、同じく底地利回りにかかわる考え方を「利回り法」、契約内容および経緯などが類似した事例があれば「賃貸事例比較法」を適用すべきとされました。

貸家及びその敷地の収益価格

収益還元法の適用において、昭和44年基準までは「実際支払賃料」であった部分を「実際実質賃料」とし、「売主が既に受領した一時金のうち売買などに当たって買主に承継されない部分がある場合には、当該部分の運用益及び償却額を含まない」と明確にされました。

収益還元法の積極活用

バブル経済の状況を踏まえ、収益還元法を積極的に活用するように次の2点が明記されました。

・ 公共・公益の目的に供されている不動産以外のものには、自用の住宅地を含めすべて適用すべきものと明記

・ 土地の取引価格の上昇が著しいときに、先走りがちな取引価格に対する有力な験証手段として収益還元法を活用すべき旨を明記

その他の年の改正

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