改正の背景
平成21年の基準改正以降に、次のような事情に対応すべく基準の一部改正が行われました。
- 不動産市場の国際化がさらに進展したこと
- 鑑定評価の説明における国際評価基準(IVS)との整合性が要請されるようになったこと
- 環境・防災・省エネルギー対策などに係るストック型社会の進展に合わせた内容が求められるようになったこと
- 証券化対象不動産に係るニーズの多様化が進展しつつあること
- 継続賃料評価の最高裁判例が定着してきたこと
国際化への対応
調査範囲等条件の新設
専門性の高い個別的要因「土壌汚染・地下埋設物・建物有害物質・埋蔵文化財等」について条件を満たせば、価格形成要因から除外して鑑定評価を行うことが可能になりました。
対象確定条件に未竣工建物等鑑定評価の新設
造成工事が完了していない土地や建築工事等が完了していない建物等について竣工していることを前提とする鑑定評価が可能になりました。
適用手法の合理化
改正前:三方式を併用する
改正後:市場の特性を適切に反映した複数の手法を適用する
特定価格概念の整理
改正前:特定価格として求めなければならない場合は、結果として正常価格と相違がない場合も特定価格として表示
改正後:特定価格として求めなければならない場合であっても、結果として正常価格と相違がない場合には正常価格として表示
ストック型社会の進展への対応
建物の価格形成要因の充実
・建物の用途に共通する価格形成要因が追加されました。
・用途に応じた価格形成要因を整備されました。
(住宅・事務所ビル・商業施設・物流施設)
原価法の規定の見直し
・建物の増改築や修繕等の状況を適切に反映した評価の明確化(再調達原価の算定や減価修正の方法の整理)
・付帯費用の規定の追加
・耐用年数に基づく方法の定義の明確化
・土地建物一体減価の明記
土地建物価格の内訳表示の規定の充実
・建付地の定義に貸家建付地も含まれるように変更
・土地建物一体価格をもとに配分して求める方法を追記
・配分する方法として「割合法」と「控除法」が例示されました。
証券化対象不動産の多様化への対応
事業用不動産に係る収益還元法の規定の追加
事業用不動産の特殊性を踏まえ、その収益性を適切に把握して評価する方法や留意点等の規定が新設されました。
定期借地権の評価手法などの整備
賃貸事業分析法の導入
新規家賃から宅地の新規地代を求める手法として基準に明記されました。
土地残余法の位置づけの変更
改正前:原則として建付地価格を求める方法と位置づけ
改正後:原則として更地価格を求める手法と位置づけ。
例外的に建物等が新築または築後間もない場合に建付地価格を求めることができると明確化
定期借地権の評価手法の整備
・借地権付建物となった場合に顕在化する借地権価格の認識
・「賃貸人」⇒「借地権設定者」、「賃借人」⇒「借地権者」へ表現変更
・借地契約の一時金の再整理
・定期借地権特有の総合的勘案事項を追加
継続賃料評価の規定の整理
直近合意時点の概念の明確化
事情変更を考慮する際の始点となる直近合意時点を定義されました。
継続賃料評価の一般的留意事項の追加
「事情変更」「諸般の事情」を総合的に勘案し、契約当事者間の公平に留意して決定することが規定されました。
継続賃料固有の価格形成要因の整理
価格形成要因として「事情変更」「諸般の事情」について整理されました。
総合的勘案事項の追加
継続地代及び継続家賃の総合的勘案事項が整理・拡充されました。
鑑定評価報告書の必要的記載事項
次の事項が必要的記載事項として定められました。
・賃貸借等の契約内容(権利の態様)の確認
・当事者間で事実の主張が異なる事項の記載
・直近合意時点の記載
その他の年の改正
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