制定の背景

昭和38年に「不動産の鑑定評価に関する法律」が制定されましたが、不動産鑑定士が不動産鑑定評価を行う場合の基準が明確に存在していなかったため、鑑定評価のよりどころとなる鑑定評価基準を制定する必要がありました。

この基準の作成に当たっては、米国不動産鑑定人協会「不動産鑑定理論(第3版 昭和35年)」や西ドイツおよびイギリスの鑑定評価方式を参考にしたとされています。

目次

不動産の鑑定評価基準 目次

前文

第1 不動産の鑑定評価に関するの基本的考察
 一 不動産とその価格
 二 不動産の価格の特徴

第2 不動産の価格に関する基本的事項
 一 不動産の鑑定評価によって求める価格
 二 不動産の価格を形成する一般的要因
 三 不動産の価格に関する諸原則

第3 鑑定評価に関する資料
 一 一般資料
 二 個別資料

第4 鑑定評価の方式
 一 復成式評価法
 二 市場資料比較法
 三 収益還元法

第5 鑑定評価の手順と鑑定評価額の決定
 一 鑑定評価すべき案件の確認
 二 予備調査の実施と処理計画の策定
 三 資料の収集、整理及び検討
 四 鑑定評価方式の適用
 五 価格の調整と鑑定評価額の決定

第6 鑑定評価書
 一 記載事項
 二 附属資料

第7 不動産の種類別の鑑定評価
 一 宅地
 二 建物
 三 建物及びその敷地

前文

前文には、①基準の目的、②基準の性格、③基準の構成について書かれています。

基準の目的

  • 不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価を行なうに当たって、その拠り所となる合理的であって、かつ実行可能な基準を設定し提供すること。
  • 不動産鑑定士等の任務の適正な限界を明らかにし、無用の混乱を防止すること。
  • これを公表することにより、不動産の鑑定評価及びその制度に関する社会一般の理解を深め、信頼を高めること。
  • 法の所期する不動産の適正な価格の形成に資すること。

【所期】しょき
《「―の」の形で》 《名・ス他》期待している事柄。期待すること。

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1

基準の性格

  • わが国及び外国において発達してきた不動産の鑑定評価の理論と活動とのなかで、わが国の実情に即して、妥当と認められるものを、総合し、要約したものであって、
  • 現在、要請されている合理的であって、かつ実行可能な拠り所として、十分に有用なものである。
  • したがって、法的強制力をもつものではないけれども、不動産鑑定士等が鑑定評価を行なうに当たっては、常に準拠すべきものであるととに、
  • 関係法令の改正などに当たっては、十分に尊重されるべきものである。
  • また、不動産の鑑定評価及びその制度に対する社会一般の理解を深め、その信頼を高めることに役立つように、随所に説明的部分を含んでいものである。
  • なお、この基準は、鑑定評価活動の内外における実際を省察して、その既に熟しているものの最大公約数とも称すべきところをまとめたものであるが、鑑定評価の理論自体が発展の過程にあるのであるから、厳格な意味においては、中間的なものであって、事実の進展に応じて、今後その充実と改善とを期すべきものである。
point
2

基準の構成

不動産の鑑定評価基準の構成を説明するものです。

point
3

価格の種類

現行基準とは異なり、正常価格と特殊価格のみが規定されていました。

不動産鑑定士等が不動産の鑑定評価によって求めるべき価格は、正常価格であることを原則として、次の(二)に述べる場合は、特殊価格とする。

昭和39年不動産鑑定評価基準

 

正常価格

(一)正常価格とは、不動産が一般の自由市場に相当の期間存在しており、売手と買手とが十分に市場の事情に通じ、しかも特別な動機をもたない場合において成立するとみられる適正な価格をいい、不動産鑑定士等は、まず、この正常価格を求めるように努めるべきである。

昭和39年不動産鑑定評価基準

正常価格を求めるべき場合として次の事項が例示されていました。

1 .売買、交換等による所有権その他の権利の移転に関連する場合
2 .金融上の抵当等に関連する場合
3 .公共用地の取得及び土地収用の際における損失の補償に関連する場合
4 .相続税、固定資産税等の税制における基準に関連する場合
5 .争訟の際における不動産の価格に関連する場合
6 .土地区画整理法その他の法律による換地処分に関連する場合
7 .賃貸料等の算定に関連する場合

point
1

特殊価格

(二)特殊価格とは、対象不動産の性格上、正常価格を求めることが適当でない場合、又は不動産の鑑定評価に際して特殊の条件が付された場合において当該不動産の性格又は当該条件に即応する適正な価格をいう。

昭和39年不動産鑑定評価基準

特殊価格を求めることができる場合として次の事項が例示されていました。

1 .合併時の評価替え、固定資産の評価替えその他企業会計処理に関連する場合
2 .公共又は公益の目的に供されている不動産の評価に関連する場合
3 .清算、競売、公売その他特別の事情に基づく取引に関連する場合
4 .担保としての安全性を考慮すべきことが特に要請される場合
5 .賃貸借の対象となっている不動産を当該賃借人に譲渡する場合

point
2

鑑定評価の方式

鑑定評価の方式には次の三手法が規定されていました。

復成式評価法

現在の原価法に相当する手法ですが、次のように定義されていました。

復成式評価法は、対象不動産について、その鑑定評価額の決定の基準とした期日(以下「価格時点」という。)における復成価格をまず求め、対象不動産が償却資産である場合には、この価格について㈤に述べるところにより減価修正を行なって価格時点における対象不動産の価格を求めようとする方式である。

昭和39年不動産鑑定評価基準

実務上は、復成現価(現在の積算価格)をもって鑑定評価額とする考え方が、長期にわたり全国的に用いられてきたそうです。

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1

市場資料比較法

現在の取引事例比較法に相当する手法です。

市場資料比較法は、取引事例となった同類型の不動産と対象不動産とについて、品等、時点等を比較対照して対象不動産の価格を求めようとする方式である。

昭和39年不動産鑑定評価基準

地域要因の概念がなかったため、地域要因の比較は行わず、また、いわゆる「直接比準方式」が採用されていたそうです。

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2

収益還元法

収益還元法は、対象不動産が将来生みだすであろうと期待される純収益の現在価格を求めるものであり、標準的な年間純収益を適正な還元利回りで資本還元して対象不動産の価格を求めようとする方式である。

昭和39年不動産鑑定評価基準
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3

鑑定評価書

昭和39年時点では、手書きによる鑑定評価書が多く、不動産鑑定士が「鑑定評価書」を作成するという記述でした。

その後、昭和44年基準において不動産鑑定士が作成するのは「鑑定評価報告書」であり、鑑定業者がタイプ製本して依頼者に交付するものが「鑑定評価書」であると明記されました。

記載事項

昭和39年基準では、必要的記載事項と任意記載事項が規定されていました。

必要的記載事項

  • 対象不動産の所在地、種別、数量その他権利の内容
  • 鑑定評価額
  • 鑑定評価額の価格時点、依頼目的その他の条件
  • 鑑定評価を行なった日付
  • 鑑定評価額の決定の理由の要旨
  • 当該鑑定評価に関する当事者間の縁故又は特別の利害関係
  • 不動産鑑定士等の資格及び署名押印
  • 交付の相手方及び日付
  • 不動産鑑定業者の事務所の名称及び所在地
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1

任意的記載事項

  • 近隣に関する事項
  • 採用した資料に関する事項
  • 鑑定評価の手順と鑑定評価額の決定に関する事項
  • その他必要と認められる事項
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2

附属資料

対象不動産の所在地及びその附近の地図、敷地及び建物の図面、写真その他の関係資料は、必要に応じてできるだけ鑑定評価書に添附するものとする。

昭和39年不動産鑑定評価基準
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3

その後の改正

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